院長コラム

カルテの余白

第3回 「性教育に専門家を活用しよう」(平成15年11月15日)

内科医の友人からこんなメールが届いた。

風邪の症状がなかなか治らないと受診した高校1年の男子。学校の先生から「治りにくい風邪は性感染症の疑いがある」と言われたらしく、「よくペットボトルの回し飲みをしますが、それでうつりますか」と尋ねたという。

10代の性感染症が問題になっているのに、学校の先生の発言がこの程度なら、それもやむを得ないのかも知れない、と思ってしまった。

厚生労働省が母子保健の取り組みをまとめた「健やか親子21」によると、15~19歳の性感染症罹患率(人口10万人あたり)は、淋菌が男子145.2、女子132.2、クラミジアは男子196、女子968。10代の人工妊娠中絶はここ数年増加し、00年には約4万4千件……。主要課題に「性教育」を挙げ、減らそうと努めている。

一方で「性の乱れにつながる」など「性教育バッシング」を唱える人たちもいる。しかし、性生活は本来、自然な営みであり、異常なことではない。それなのに何か恥ずべきもののようにふたをしたがるのはなぜだろうか。性教育の内容が中絶や性感染症といったテーマが中心で、性への暗いイメージを植え付けてきたからではないか。その結果、不十分で不正確な知識しか持たないまま性体験の低年齢化が進んでいるとしか思えない。

本当に必要なのは生殖生理の正しい知識だ。「健やか親子21」ではその役目を産婦人科医が担うことが検討され、東京産婦人科医会はすでに高校生を対象に学校や父母らと協議して教材を作成し、担当医も決めている。正しい知識を広めて意識を向上させるのに専門家を使わない手はないと思うのだが。

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