カルテの余白
第6回「低用量ピルの「副効用」」(平成15年12月6日)
経口避妊薬の低用量ピルが認可されて4年。来院する患者の中に、避妊ではなく「月経痛を抑えたい」などと、日常生活の支障になる症状の改善のために服用する人が目立ってきた。
低用量ピルの情報提供のために関連製薬会社でつくる情報センターが、服用者を対象に実施した意識調査(03年度)でも同じような傾向が出ている。
「飲むきっかけ」を尋ねると(複数回答)、避妊が7割以上ともっとも多いものの、「月経周期の安定」は37%で、「月経痛の軽減」は29%。月経周期の安定は17~24歳に、月経痛の軽減は25~34歳に多かった。
薬には、目的とする効果(主作用)のほかに、有害な反応(副作用)がある。主作用以外の効用がわかることもある(副効用)。低用量ピルの主作用は避妊。副作用は、血液が固まりやすくなることや、乳がんなどになりやすくなることがある。最近目立ってきた使われ方は副効用を期待してのことだ。
低用量ピルの服用は、女性が自ら体のことを考え、自ら「産む」「産まない」をコントロールするなど人生設計にもつながると言われる。しかし一方で、性感染症が増えるのでは、との不安も指摘される。ピルを適切に使うには、その作用や性に関する正しい知識が前提になる。
性への不安や疑問が多い半面、産婦人科の受診に抵抗を感じやすい若い世代にとって、何でも相談できる「かかりつけ産婦人科医」を、ピルの服用を通じて見つけることも一つの方法だ。
定期的に健康をチェックしていえば副作用にも早く気づくことができる。性に関する正しい知識の普及につながれば、それも大きな「副効用」だろう。産婦人科医の責任が重いのは言うまでもない。