カルテの余白
第7回「患者から学ばなければいけないこと」(平成15年12月13日)
子宮頚がん検診に触れたこと(前々回)に対し読者からメールを頂いた。「産婦人科医の対応や説明の悪さが女性の心理的負担となり、受診率低下につながっている。このことを医師が自覚しない限り問題は解決しない」と。
正直、はっとした。残念だがこの指摘を否定できなかった。いわゆる「ドクターハラスメント」について、私も他の医師の批判を聞くことはある。私も同じことをしているかも知れない。
メールを読んで、聖路加国際病院理事長の日野原重明先生の「医師は『患者学』を学べ」という文章を思い出した。医師も患者になって初めて患者の気持ちがわかるというもので、NBM(Narrative Based Medicine)という、患者や家族との会話を重視する医療の重要性を説いている。
私は「ごめんなさいね」と声をかけるようにしている。「待たせてごめんなさいね」。注射の時は「ちょっと痛みますが、ごめんなさいね」。顔を見てゆっくり話すことを心がけている。
新米医師のころ、先輩に「患者に簡単に謝罪の言葉を言ってはいけない。裁判になったときに不利になる」と言われた。しかし今、私が言っている「ごめんなさい」は意味が違う。
不安と苦痛をもって来院する患者に医療行為とはいえ、精神的・肉体的に新たな「苦痛」を加える。ふつうの人と人との関係だったらどんな会話をするだろうか……。しかし、すべての患者に同じように接することができているか。自信がない。忙しいという理由で会話に十分な時間が取れなかったこともないとは言い切れない。
NBMを根付かせるために実践するに、臨床研修の中で、研修医が内緒で患者になって「患者学」を体験してみてはどうだろうか。