院長コラム

カルテの余白

第8回「若い人には『太りなさい』」(平成15年12月20日)

彼女は22歳、生理が来ないことを心配して来院した。身長160cm、体重45kg、春に就職し生活が忙しい上、同僚からダイエットを勧められて半年で10kg以上やせたという。急に体重が減ると生理が不順になる、元の体重くらいがよいと説明しても、納得せずに、まだまだやせたい、と言い張った。

美しくやせたい―女性のみならず男性も願望し、世間にはダイエット法の解説や食品などがあふれているが、日本の女性は太っているのだろうか。

01年の厚生労働省の国民栄養調査では、女性は60歳以上の約3割が肥満だが、若い層ではやせの傾向が顕著だ。肥満の判定にはBMI(体重を身長の2乗で割る)が用いられ、22前後が「理想」で、25以上が「肥満」、18.5未満が「やせ」とされる。

女性では「やせ」の割合が20年前に比べて、20代は1.5倍、30代では2倍になっている。さらに体形に対する自己評価も半数以上の女性が現実の体形より太めに評価している。

体重は女性の生殖機能に影響する。多すぎても少なすぎても月経異常、不妊、妊娠や分娩の異常が増える。たとえば月経異常。BMIが25前後で「理想」の2倍、35以上で8倍になる。やせによる無月経は重症例が多く、長期化すると骨粗鬆症になる恐れがある。閉経後に急増する内臓脂肪型肥満は子宮体がん、乳がんとの関連が指摘され、子宮体がんは体重10キロの増加で3倍になるとされる。

こんなデータを説明し、年配の人に「やせなさい」、若い人には「ふとりなさい」と言っている。そのために必要なのは「食生活の見直し、体に応じた運動」だ。実に当たり前のことだが、なかなか実行しにくい。何か妙案はないだろうか。

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