カルテの余白
第10回「患者と医師との橋渡し役が欠かせない」(平成16年1月3日)
「今までの治療の意味がやっとわかりました」、「質問をしたかったのですが、先生が忙しそうだったので・・」不妊の相談に来る患者は、こんなことをよく口にする。たいていはすでに検査や治療を受けている人たちだ。
原因や程度は人によって異なり、検査も数多い。その治療法もここ10年ほどで格段に進歩し、患者の選択肢が広がった。しかし、内容は高度になり、患者が理解するには時間がかかる。治療や検査の説明は医師の責務だ。だが、日常の診療の中で説明に費やす時間に限りがある。私も通常の診療とは別に「不妊相談」の時間を設けているが、なかなか十分な説明ができない。
いろんな悩みを抱えているうえに、十分に理解できないまま治療を受ける患者の精神的な負担は増すばかりだ。
いま一つの専門職の必要性が指摘されている。情報提供とともにや精神面をサポートし、患者が納得して治療を受けられるようにする。患者と医師の橋渡し役(コーディネーション)だ。
厚生労働省研究班の報告(00年度)では、体外受精などの不妊治療をしている施設の半数がその必要性を認めているものの、実働しているのはは30%程ほど。それに、専門知識に加え、高い倫理性が求められるが、それを担保する制度はなく、研究班は01年度の報告で資格制度を提言している。
日本看護協会は、特定の分野で、水準の高い看護の実践を目的の設けた認定看護師制度の中に不妊看護を追加。去年11月現在で14人を認定している。しかし体外受精などの不妊治療施設は国内に500以上ある。患者がより安心して治療を受けられるようにするため、医師の努力はもちろん、こうした専門職を目指す人が増えることを期待したい。