院長コラム

カルテの余白

第11回「医師選びの目安とは」(平成16年1月10日)

小児科や内科の患者を診ているとき、「先生って何科の先生ですか」と聞かれることがある。「産婦人科だよ。待合室に産婦人科専門医の認定証があるでしょう。」と答えているが、開業医は複数の診療科を標榜することが多く、患者からは「何でも診てくれて便利だけど何が専門なのか解りにくい。」という批判がある。

確かにこれでは患者が医師を選ぶときに迷ってしまう。このわかりにくさへの反省から厚生労働省は02年春に一定基準を満たす学会が認定した専門医資格は広告できるようにした。これでわかりにくさが「ある程度」解消した。

ある程度というのには理由がある。産婦人科を例にすると、米国では多くの医師は研修と試験で一般産婦人科認定医を取得するが、約1割がより専門化した分野のスペシャリストを目指してさらに高いハードルに挑むという。

日本ではほとんどの産婦人科医が5年間の研修と試験で専門医を取得する。ところが、その先の専門を目指す制度は検討が始まったばかりだ。

医療は専門分化がどんどん進み、同じ産婦人科でも専門が不妊症と腫瘍では、診療に、おのずと違いが出てくるといっても過言ではない。これはこれで反省しなければいけないのだが、こんな現状で、患者は何をもとに医師を選べばいいのだろか。

最近、医師会などの会合で、かなり専門的な診療経験がある若手の開業医が多いことに気づいた。でもふつう患者にはそれがわからない。本来必要とする専門に行き着くのに時間がかかり、適切な治療を受ける機会を逃す恐れもあるし、医療費の無駄にもなる。医師個人の能力を公平で具体的に示す。医師選びにはそれが欠かせないと思うのだが。

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